No. 00023 緯度:35度 62分 経度:134度 81分
【兵庫県】 路地にやさしい灯火が灯る カランコロンと下駄の音軽く 温泉情緒で外湯をめぐる… 城崎温泉

多くの文豪が訪れた名湯-城崎温泉

志賀直哉や島崎藤村、与謝野寛・晶子など多くの文豪が歩き感じた旅情をゆっくりのんびり巡ってみよう。

城崎温泉は今から1400年程前、舒明天皇(629)の頃、一羽のコウノトリが足の傷を癒していたことから発見され鴻の湯と呼ばれ、城崎温泉の起源とされています。その後、道智上人が難病の人々を救う為に千日間曼陀羅を唱え湧き出た「まんだら湯」等、7つの外湯が楽しめる。
大谿川沿いのしだれ柳の並木 城崎温泉の代表的な景観です。 外湯めぐり「まんだら湯」
大谿川沿いのしだれ柳の並木
城崎温泉の代表的な景観です。
外湯めぐり「まんだら湯」

志賀直哉が小説『城崎にて』を執筆したのは大正2年の秋。東京で交通事故に遭い、その療養のため城崎に約3週間滞在したらしい。

路地に響く下駄の音と楽しそうな話し声…温泉街の夜は更ける
直哉も散策した大谿川沿いの道
直哉も散策した大谿川沿いの道
素朴さをそのまま残す裏水路
素朴さをそのまま残す裏水路
カラン、コロン、各旅館の浴衣や丹前を纏った若い男女、中年・熟年のカップルが入浴セットを片手に下駄の音を響かせ行き交う光景は、今も昔も変わらない。
時は変われど、志賀直哉が訪れた大正時代にも、同じような旅情が見られたことだろう。その後も直哉は生涯に城崎を十数回訪れている。
城崎温泉は、兵庫県の日本海側、豊岡市に属する。豊岡と言えば、コウノトリの放鳥で有名であるが、それ以上に最近では市内を流れる円山川の堤防の決壊で洪水に見舞われたり、夏冬の最高気温、最低気温でも過酷な記録を樹立するなど、名誉と言うには偲ばない面もある。しかし、その反面、我々人類も例外なく、生き物にとっては最も大事な自然は豊かで「日本の原風景」を多く残している。

JR城崎駅
JR城崎駅
駅前
駅前
城崎駅を過ぎると列車は直ぐに日和山トンネルをくぐる
城崎駅を過ぎると列車は直ぐに
日和山トンネルをくぐる
JR福知山線と国道9号線 道端にはコスモスが…
JR福知山線と国道9号線
道端にはコスモスが…
城崎温泉には柳が似合う
城崎温泉には柳が似合う
コウノトリ公園
コウノトリ公園
そんな円山川を下った河口付近に城崎温泉はある。
列車でなら、JR福知山線「城崎」駅で下車。駅前から温泉街が広がり、駅の東側には道路を隔てて円山川が静かに流れている。
逆に、円山川脇の堤防道を遡ると、やがて豊岡市の「コウノトリ公園」の表示が見えてくる。城崎を含め、昔からこの界隈にはコウノトリが沢山生息していたようだ…。

城崎と聞けば、温泉街の中央を流れる大谿川沿いの枝垂れ柳が風にそよぐ様をよく目にするが、その情景は今も健在である。
城崎に限らず、温泉町の多くは、昼と夜でその顔を大きく変える。
日中は、各旅館に食材を配達する車やリュックを背負い、名所を訪ね歩く観光客の姿が目立ち、慌しく乾燥した何とも言えない殺風景さを私は感じてしまうが、日が暮れ街燈に明かりが灯る頃になると、温泉街特有の、あのしっとりとした情緒ある趣が帰ってくる。この情景に中に身を置くと、「あぁ、温泉に来たなぁ〜」と感じてしまうのは、日本人が持つ特有の感性かもしれない。

城崎の魅力は、何と言っても 湯量の豊富さと外湯の楽しさである。
現在のように旅館に内湯が用意されたのは昭和30年頃。それまでは外湯だけで多くの観光客を楽しませてきた。
現在外湯は駅前の「さとの湯」をはじめ「地蔵湯」「柳湯」「一の湯」「御所の湯」「まんだら湯」「鴻の湯」の趣向の違った7つの湯がある。
夜の城崎温泉は、この湯めぐりで堪能したい。
元湯(城崎温泉源泉)は薬師公園内にある
元湯(城崎温泉源泉)は
薬師公園内にある
足湯
足湯
源泉は、温泉街の奥の薬師公園ポケットパーク内にあり、自然石から湧き出ている。
足湯も5ヶ所設けられ、また、宿泊客に限られたサービスではあるが、各宿泊施設では全外湯の無料券サービスも実施しており、これが宿泊客には人気がある。
7つの外湯全てを回るのは、簡単そうに思えるが、これがどっこい!思いの他結構辛い。
途中、湯あたりで疲れを感じたら無理をせずに休憩するなど、体調に合わせ余裕を持って回って欲しい。
7湯それぞれが趣きのある建物で、外観を見るだけでも楽しめる。ちなみに俗っぽい話で申し訳ないが、通常なら7湯全てを巡ると、大人料金で4,600円掛かってしまう。先述の無料券サービスの人気の訳がよく分かる。
7湯については、もっと詳しい情報を記しておきたいが、長くなるので城崎温泉公式サイトにリンクを貼っておいたのでそちらでご確認いただきたい。
湯めぐりを終え、少し疲れた体を旅館の布団に横たえると、直ぐに睡魔が襲ってきた…。

翌朝は散歩がてら、街中を散策する。

温泉寺山門
温泉寺山門
宝鏡寺宮理豊内親王 御筆
宝鏡寺宮理豊内親王 御筆
運慶・湛慶作と言われる金剛力士像
運慶・湛慶作と言われる
金剛力士像
薬師堂
薬師堂
薬師堂の絵天井
薬師堂の絵天井
温泉街の突き当たりの薬師公園ポケットパークは、春の桜、秋の紅葉のスポットとなっていて、四国薬師第29番霊場となる「温泉寺」薬師堂がある。
「温泉寺」は城崎温泉の守護寺として崇められ、総檜作りの山門の奥に薬師堂が佇んでいるが、背後にある大師山全てが温泉寺の敷地、つまり境内となる。大師山の頂上にはかつて「奥の院」があったが、平成19年、老朽化のため取り壊し、現在再建計画中で見ることはできない。
本堂は山腹にある。
山頂には徒歩またはロープウェイで登ることができる。

重厚で見事な山門は、至徳、永正、寛文年間と幾度となく建て直され、楼上の「末代山」の額は後西天皇の皇女、宝鏡寺宮理豊内親王の御筆である。現在の門は明和年間(1764〜1772)に再建されたものと言われている。
山門の両側には、運慶・湛慶の作と言われる金剛力士像が睨みを効かせている。
薬師堂の本尊はその名の通り薬師如来であり、城崎温泉とその入湯客を守護してくださるお薬師さんとして信仰を集めている。
【拝観時間・料金】
本坊および本堂 300円、薬師堂は無料
午前9時〜午後5時
※但しロープウェイの休業日は休館の場合あり。
(第2第4木曜 祝祭日の場合は除く)
昼間の温泉街は閑散としているが…、 明かりが灯ると活気を取り戻す! 薬師堂の紅葉
昼間の温泉街は閑散としているが…、明かりが灯ると活気を取り戻す! 薬師堂の紅葉

ロープウエイで大師山山頂へ…城崎の町を見下ろす
薬師公園にある城崎温泉ロープウエイ乗り口
薬師公園にある
城崎温泉ロープウェイ乗り口
大師山山頂から温泉街を望む
大師山山頂から温泉街を望む
ロープウェイに乗り大師山山頂へ上ってみよう。
城崎温泉にロープウェイがあることは案外知られていない。昭和38年に開通し、平成13年にリニューアルされたもので、実は、結構歴史のあるロープウェイなのだ。
全長は676mで、日本のロープウェイでは珍しく中間駅(温泉寺駅)がある。上下のゴンドラを同時にこの中間駅に到着させるために、麓駅は少し高台に作られ、階段を上らなければならないが、麓から山頂までを約7分、20分間隔で運転されている。

頂上に立てば、円山川の緩やかな流れとその先に広がる日本海の見事な景観や温泉街の全景が眼下に広がる。

冒頭に、「多くの文豪が訪れた名湯-城崎」と書いたが、城崎温泉には縁のある文豪の歌碑が24碑ある。最も有名なのは「城崎にて」を著した志賀直哉であるが、その歌碑は城崎温泉観光協会の前に建てられている。JR城崎駅前には「島崎藤村」、一の湯の前に「与謝野寛・晶子」、麓駅近くには「松尾芭蕉」等があり、ここ、大師山山頂には徒然草の作者「吉田兼好」の歌碑があり、『花のさかり 但馬の湯より 帰る道にて 雨にあひ しほらしよ 山わけ衣春雨に 雫も花も 匂ふたもとは』と詠んでいる。

歌のポスト 写真は城崎温泉観光協会HPより転載
歌のポスト 写真は城崎
温泉観光協会HPより転載
尚、城崎温泉観光協会では、旅の思い出を歌にしたためて投函できる「歌のポスト」を 「文芸館前」「駅前」「一の湯横」「温泉寺薬師堂前」の4箇所に設置している。
毎年3月末に選評し、優秀作の方には麦わら細工が贈られるので、旅行記念に応募してみては如何だろう。
山上駅近くにあった奥の院は、千手堂とも呼ばれ、弘法大師作と伝わる千手観世音菩薩像が祭られていたが、長年の風雪による老朽化で雨漏りが酷く柱も腐り朽ちてしまったため、平成19年に解体されて、現在は拝観する事ができない。現在、千手観世音菩薩は本坊の本尊として祀られている。奥の院を拝観できない事は非常に残念だが、再建計画中とのことなので完成が楽しみである。

山頂から麓までは徒歩でも下る(もちろん上りも)事ができる。ロープウェイの営業時間が9:10から17:10(下りのみ)なので、乗り遅れると歩いて降りなければならなくなるので注意が必要だ。
途中駅の「温泉寺」には本堂、多宝塔、城崎町美術館があるので下りのロープウェイの時間を確認して散策してみよう。
城崎温泉の路地
ロープウェイの麓駅まで戻り、再度街中を歩いていたら、細い路地を発見した。路地育ちのためか、路地を見ると何故かウキウキしてしまう。路地に漂う生活の匂いが好きだ。ただ、路地はそこに生活している人達の玄関先でもある。見ず知らずの旅行者が安易にズカズカと足を踏み入れる場所ではないと思っている。
遠慮しながら路地の雰囲気を感じ取り、その場を後にした。

「城崎マリンワールド」から「玄武洞公園」へ…

子供の頃、近くに住んでいた友人が、城崎マリンワールドに行った…と話していたことがある。
当時、旅行など縁のなかった私は「ふーん」と応えただけだった。もう、50年近い昔の話であるが、当時から「城崎マリンワールド」は観光地であったようだ。
気になったのでWikipediaで調べてみた。
創業は何と1934年5月21日と書いてあった。私の生まれる20年近く前から営業しているらしい。
全国的な動物園、水族館ブームがあり、色々と水族館ができたので、水族館そのものはそう珍しいものではなくなってしまった。私の住む大阪にも「海遊館」という大きな水族館がある。しかし、やはり昔のことであれ、友人が行ってきたという「マリンワールド」を一度は見てみないわけにはいかないだろう!…と、言うわけで「城崎マリンワールド」に向かった。

沢山の魚たちの生態が観察できるシーズー
沢山の魚たちの生態が
観察できるシーズー
シーランドスタジアムではペンギンやイルカたちがショーを盛り上げます
シーランドスタジアムではペンギンやイルカたちがショーを盛り上げます
シーランドスタジアムでは
ペンギンやイルカたちが
ショーを盛り上げます
城崎マリンワールドは、円山川が海と出会う日和山海岸沿いに大きな駐車場を幾つも持つ海と直結した水族館だ。
入園料、大人ひとり2,310円(駐車場別途700円)を支払い中へ…。
「シーズー」と呼ばれる体感できる水族館エリア、海の中を擬似体験できる「ダイブ」エリア、イルカやアシカ、ペンギンたちのショーが見られる「シーランドスタジアム」、直接イルカに触れられる「ドルフィンタンク」、初心者もチビッコも気軽に手軽にフィッシングが楽しめる「フィッシング」の5つのゾーンに分かれている。子供連れやカップルなら一日中楽しめるプログラムが盛りだくさんに用意されている。
城崎マリンワールドまでの道路沿いには沢山の海産物店が店を開いている。当地でしか買えない新鮮な魚介類を吟味するのも、また、旅の楽しみだ。冬場なら蟹好きの日本人には堪らない松葉蟹が店頭を飾る。

        ●玄武洞公園●
北朱雀洞
北朱雀洞
南朱雀洞
南朱雀洞

白虎洞
玄武洞
玄武洞
青龍洞
青龍洞
いよいよ城崎の旅も終盤に近づいてきた。
今回の最後の目的地「玄武洞公園」に向かった。
円山川沿いに城崎大橋を渡り右折。反対側の円山川岸を進めば左側に見えてくる。
玄武洞と名のつくところは全国にいくつか存在する。その多くが玄武岩が柱状摂理状に積み重なり侵食によって洞となった名所である。
豊岡市の玄武洞もそのひとつで、160万年前の火山活動で生じた溶岩が冷却し五角形や六角形の規則正しい筒状に整形された自然の造形物で見事な景観を呈している。
ここ、玄武洞公園には、朱雀や白虎、青龍など、中国の神獣の名の5つの洞窟がある。
昭和6年(1931)国の天然記念物に指定された。
レストラン前の階段を上り散策コースを進むと、やがて目の前に北朱雀洞が見えてきた。
実物を目の前にすると結構な迫力だ。規則正しく並んだ柱状摂理が美しく波打っている!右に進むと南朱雀洞、白虎洞と、次々と洞が見えてくる。
いつまでも見ていたい眺めだが、陽も傾きはじめたようだ。
最後の青龍洞を目に焼き付けた頃には夕暮れが近づいていた。一日の終わりを彩る夕日を背にしながら帰路についた…。

●城崎温泉縁の文豪歌碑
大師山山頂の吉田兼好の歌碑 麓駅近くにある松尾芭蕉の歌碑 城崎駅前にある島崎藤村の歌碑
大師山山頂の吉田兼好の歌碑 麓駅近くにある松尾芭蕉の歌碑 城崎駅前にある島崎藤村の歌碑

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