No. 00008 (2010/04/12) 北緯:33度 94分 東経:135度 76分
【奈良県】 源泉掛け流し十津川温泉郷

十津川温泉関西の秘境。奈良県の「十津川温泉郷」には、多くの旅館や商店が集る二津野ダム湖畔の「十津川温泉」。その上流にひっそりと佇む、十津川で最も古い「温泉地温泉(とうせんじおんせん)」。十津川温泉から西へ5km。上湯川上流に享保年間に里人が見つけたと言われ、大自然の中のしっとりと落ち着いた秘湯「上湯温泉」…と、異なった3つの良質高温泉が湧いています。 谷瀬の吊橋どの温泉地も源泉かけ流し、渓谷美豊かで効能も優れた温泉です。

さらに上流には風屋ダムや日本最長を誇る長さ297m、高さ54mの鉄製の谷瀬の吊り橋も見逃せない見所です。
写真は十津川温泉と谷瀬の吊り橋
 

串本から新宮へ
串本温泉で旅の疲れを癒し、翌日はきのくに号で新宮へ向かい、新宮からは路線バスを利用し一路十津川村へと向かうことにした。

十津川村への交通の便はお世辞にも良いとは言えない。本来なら自家用車で行くのが自由気ままに動けるという利点があるが、今回は敢えて公共交通機関である路線バスに乗って、のんびりと辺りの風景を楽しむことにした。但し、注意しなければならない事がある。
新宮から十津川村まで行くバスは一日に僅かしか無い。熊野本宮大社までなら、結構バスの便があるが、そこから先は乗り継ぎするしかない。その乗り継ぎもちょうど良い時間には無いようなので事前にバスの時刻を良く調べる必要がある。
今回は、新宮発9時58分のバスに乗る予定で、串本発8時の列車に乗車した。


串本から新宮までの所要時間は普通列車ではおよそ1時間10分ちょっと。8時発の列車に乗ればバスの時間に十分余裕があるので、今回は急行などを使う必要も無く、料金も安上がりになるのでのんびりと鈍行列車の旅を楽しむことになった。
黒潮おどる太平洋を眺めながら海岸線沿いに進んでいく。
4月の初めだが、さすがに南紀だけあって暖かく桜の花も満開とまではいかないものの、7〜8部咲きで、列車の窓からお花見気分が味わえる。
車窓からは桜だけではなく、春の野草なども見ることができ、なかでも都会ではあまり見かけることが無くなった「つくし」にお目にかかることが出来たのが印象に残っている。
昔は春先に河原や土手に行くと当たり前に見ることが出来た「つくし」も今では珍しいものになってしまったのだろうか・・・
自然は人間がいなくても存続できるのに対し、人間には自然の恵みは無くてはならない貴重なものである。

地球温暖化が進んでいく中、人間が行ってきた自然環境破壊がもたらした結果なのかと考えさせられてしまう。

列車が走ること、およそ50分…紀伊勝浦駅に到着。ここで列車は時間調整のため数分間停車。
向かいのホームには白浜行きの特急「南紀」、隣のホームには新大阪行きの特急「スーパーくろしお」が入ってきた。各列車から乗り降りする旅行客…行きかう人々の姿はのどかで旅情を感じさせてくれる。
停車時間が長いので、カメラを手にホームを歩くと、線路沿いに咲いている桜並木が目の前に広がってきた。
一足先に旅先で見る桜の花にほっと心和むひと時だ。

紀伊勝浦を出ると新宮までは後一息、20分余で到着する。勝浦の次は鯨で有名な太地、列車の中から鯨博物館を見ることが出来た。
そうこうする内に一つ手前の三輪崎海岸に差し掛かり、いよいよ新宮に到着である。
串本駅に到着した新宮行きの列車「きのくに」 新宮から熊野川沿いに168号線を走る 上流に行くにつれて水の色の青さが増して、渓谷美が美しい
串本駅に到着した
新宮行きの列車「きのくに」
新宮から熊野川沿いに168号線を走る 上流に行くにつれて水の色の青さが
増して、渓谷美が美しい

新宮から熊野川沿いに
1時間余の鈍行列車の旅を終え、午前9時を10数分過ぎたころ新宮駅に到着。
十津川温泉を経由して近鉄八木行きのバスの時間まで30分余あるので、先ず駅構内にある観光案内所へ向かった。ここで観光案内のパンフレットや地図などを頂き、バスを待つ間に目をとおす事にした。
新宮駅前から発着するバスは熊野交通、明光バス、奈良交通と三社あり、行き先によってバス会社が違うのでよく確かめて乗り間違えないようにしなければならない。

今回の宿泊予定地は十津川温泉郷のひとつで、最北にある、「湯泉地(とうせんじ)温泉」なので、熊野交通や明光バスではなく奈良交通のバスで近鉄大和八木駅行きに乗車した。

このバスは1日に3本しか運行されていない。1便のバスは新宮駅発5時53分、次の便が7時58分、なんと新宮駅発9時58分が3便目のバスで、それに乗りそこなうと十津川温泉以北へ行くには、タクシーか自家用車でないと不可能ということになる。 他社のバス等を乗り継ぐという方法も無い訳ではないが、待ち時間が長かったり路線が若干違うなど、思うようには行かないようだ。そうなると、やはり直通で目的地まで行けるバスに乗る方が良いということになる。

公共の交通機関を利用する人にとってはなんとも不便なものであるが、秘境といわれる所以でもあるのだろう。
バスを待つ事およそ40分、いよいよ路線バスでのツアーの始まりだ。
新宮駅前を出発して、バスは熊野川沿いの168号線を北上し、途中瀞峡めぐりのウォータージェット船乗り場がある志古を通り、川湯温泉、渡瀬温泉、湯の峰温泉の順に通過し、本宮大社前へと進んでいく。
湯の峰温泉では、バスの時間調整のため暫くバスは停車するので、気分転換を兼ねてカメラ片手に降り立った。

湯の峰温泉は古くから保養や静養、言わば湯池場として有名で、山中のひなびた温泉地だ。素朴な宿が並ぶ川の流れから湯気が立ちのぼり、宿の庭先に咲く桜や連翹(レンギョウ)の花が春らしさを感じさせてくれる。
ちょうどこの辺り、新宮から1時間ほどで、目的地までの中間地点でもある。新宮を出て間もないところでは、熊野川も雄大な姿を見せていたが、この辺りまで来ると道路もくねくねと曲がり細い山道が続き、川幅も狭くなってくる。が、反面川の水の色は奥へ行くにつれ深いエメラルドグリーンに変化し、見事な渓谷美を見せている。

新宮駅からは我々の他に観光客らしい人はなく、地元の人らしい乗客が2〜3人乗っているだけだ。これではバスの便が少ないのも仕方ないのだろう。
地元の乗客とバスの運転士さんは皆顔馴染みのようすで、世間話をしている。なんともローカルな感じでのどかである。
ひなびた雰囲気、しっとりとした「湯峰温泉」 熊野本宮大社 二津野ダム湖畔「十津川温泉」 十津川村 平谷地区
ひなびた雰囲気、しっとりとした
「湯峰温泉」

熊野本宮大社
二津野ダム湖畔「十津川温泉」
十津川村 平谷地区


十津川温泉郷から谷瀬の吊り橋
熊野本宮大社をあとに、いよいよ奈良県へ走る。新宮からおよそ2時間、二津野ダム湖畔「十津川温泉」に到着した。湖のエメラルドグリーンと桜の淡いピンクが眼に鮮やかでその美しさに思わずため息を漏らした。

十津川村は奈良県の最南端にあり、面積は672.35キロメートル。村としては日本一の大きさで、滋賀県の琵琶湖とほぼ同じ大きさである。
十津川村内には泉質の異なる温泉(湯泉地・十津川・上湯)が3つあり、その3つを合わせて「十津川温泉郷」と言う。奈良県で唯一、環境省の国民保養温泉地の指定になっているところでもある。また源泉温度も「60度」・「70度」・「85度」と、すべてが高温泉で、こちらも奈良県では十津川温泉郷だけらしい。

3つの温泉は情緒(景色)も山峡やダム湖畔と違い、それぞれの持ち味を楽しむことができる。また、十津川村内の温泉施設はすべて一切循環なしの「源泉掛け流し」なのも嬉しい限りだ。

十津川温泉は、十津川村で最も多くの旅館や商店が集まって賑わっており、元禄年間に炭焼き人夫が発見したと言われる下湯を源泉としている二津野ダム湖畔の温泉地。 泉質は食塩重曹泉、源泉温度:70℃、効能はきりきず・火傷などに有効。温泉の特徴としては、食塩を含み湯冷めしにくいきりきずなど外傷的な病気にも効果がある。日帰りでも入浴できる公衆浴場は、蕨尾公衆浴場、昴の郷温泉保養館星の湯、庵の湯(足湯は無料)の3ヶ所がある。

湯泉地温泉は、十津川村のほぼ中央に位置し、歴史は古く、源泉より十津川に沿って旅館・民宿が点在する静かで山峡の情緒ある地域である。
泉質は単純硫黄泉、源泉温度:60℃、効能は慢性婦人病などに有効。温泉の特徴としては、温泉の定番とも言える硫黄泉で、全般的な病気に効果がる。また、地元の人々も利用する 滝の湯、泉湯の2つの公衆浴場がある。

上湯温泉は、十津川温泉から西へ約5kmの上湯川上流に湧く温泉。享保年間に里人が見つけたといわれる大自然の中のしっとり落ち着いた秘湯。
泉質は重曹泉 (炭酸水素塩泉)、源泉温度:85℃と3つの温泉の中でも一番温度が高い。効能は皮膚病・アトピーなどに有効。温泉の特徴としては、肌をしっとりさせる「美人の湯」とも言われアトピーにも効果がある。公衆浴場としては、上湯温泉の手前にある出谷温泉公衆浴場の「つるつる乃湯」がある。

十津川温泉で時間調整する間にバスから降りて二野ダム湖と湖畔にある庵の湯付近を散策、まもなくバスは十津川温泉をあとに出発し、ほどなく目的地「湯泉地温泉」に到着である。ホテルに荷物を預け早速周辺を歩いてみる事に・・・この辺りはホテルや旅館の数も少なく川沿いに民家が点在するくらいだが、またそれが素朴さを感じさせてくれる。そして川沿いの渓谷美の美しさが新鮮に思えるのだ。この日の夜はゆっくり掛け流しの温泉に浸かり、川のせせらぎの音を子守唄に眠る事になった。

翌日は生憎の雨となった。バスの時間まで歴史民族資料館で十津川村の歴史や文化を見学し、お昼過ぎに村役場前のバス停から、五条方面へと向かった。
168号線は山間の道でくねくねと細い道が続く。自家用車でのドライブも良いのだが、路線バスで行くのものんびりと辺りの景色を眺める事も出来、気楽に楽しめるので良いものである。新宮では熊野川と呼ぶこの川も奈良県にはいると十津川と呼ばれている。

この川のさらに上流には風屋ダムがあり、村の北の端、上野地には日本最長を誇る長さ297m、高さ54mの鉄製の谷瀬の吊り橋がある。バスはこの上野地で2〜30分見物の時間をとってくれる。何軒か土産物屋があり、食事やお茶を飲む事も出来る。
日本一長い吊り橋はなかなか手強そうだ。雨の中ほんの少し歩いてみたものの、真下に見える谷に吸い込まれそうな気がしてとても先へ進めなかった。

勇気ある方は一度端から端まで渡ってみては如何でしょうか・・・?!

いよいよ谷瀬の吊り橋をあとに、バスは十津川村を抜け終着の近鉄大和八木駅へ……今回の鉄道と路線バスでの旅に終わりを告げることになった。

湯泉地温泉 公衆浴場 「泉湯」 「湯泉地温泉(とうせんじおんせん)」 十津川村小原地区 日本最長を誇る長さ297mの谷瀬の吊り橋
湯泉地温泉 公衆浴場 「泉湯」
「湯泉地温泉(とうせんじおんせん)」
十津川村小原地区

日本最長を誇る長さ297mの
谷瀬の吊り橋